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会長挨拶

学会長に就任して

 今井一郎会長の後任として会長を拝命しました津田敦です。プランクトン学の発展と普及のために全力を尽くすつもりですので、よろしくお願い申し上げます。さて、春の総会の席で今井会長から、2018年は日本プランクトン学会50周年であることを告げられました。慌てて周年事業などについてあたまを巡らせましたが、片野幹事長が記録を調べると、1983年4月に30周年記念シンポジウムを開催し、日本プランクトン学会報創立30周年記念号を1984年に発行していました。記念号の入江春彦会長による「日本プランクトン学会30年の歩み」によると、学会の設立は1968年4月ですが、日本プランクトン研究連絡会の設立は1952年9月に遡ることができ、1983年4月の記念シンポジウムは、連絡会の発足からの周年となります。また、2003年11月には東京海洋大で、日本プランクトン学会創立50周年記念シンポジウム(ベントス学会と共催)および式典を開催しています。ジャズサックス奏者の坂田明さんがプランクトンの啓発活動で表彰され、記念講演を行ったGraham Hosie博士のバグパイプとセッションを行ったことを思い出しました。よって今年度は65年目となり、2022年秋か2023年春に70周年記念事業を持つことが良いと考えました。ただ、30周年からずいぶん時間が経過しておりますので、重要な事項(シンポジウム、英文誌・邦文誌化、PBR創刊、秋の研究集会など)に関しては少し記録を整理するつもりです。

 幹事長の平井惇也や他の幹事とともに粛々と会務をこなしていく所存ですが、会員数を増やし、学会のアクティビティを活性化する会員の皆様からのご提案をお待ちしています。2年間、よろしくお願いします。

 さて、プランクトンって何でしょう?一般的には遊泳力が弱く、水塊と一緒に動くものと定義されます。しかし、まったく泳がない生物は稀です。小さな藻類も鞭毛をもって泳いだり、鞭毛をもっていなくてもスライディングして移動したりしますし、一般的にはプランクトンに分類されるクラゲも水族館で見ていると、結構なスピードで泳いでいます。プランクトンが本当にプランクトンであれば、プランクトンの分布など、ほとんど研究する必要性がなく、水塊の移動や混合を見ればよいはずです。しかし実際には、プランクトンは水塊とは異なった挙動をしまします。例えば、Acartia属カイアシ類は沿岸域に主に分布するカイアシ類で、Acartia hudsonicaは、河川水の影響があるようなごく沿岸に分布します。これは考えてみると不思議なことで、常に潮汐でかき混ぜられ、沖合にフラッシュアウトしているはずなのに、彼らは岸にへばりついています。たぶん要因は2つあり、一つは分散に増殖が打ち勝てない時期は海底で休眠している。第二に未知の行動で岸近くに定位しているためです。沿岸性プランクトンが沿岸に生息していることは当然ですが、実は、我々はそのメカニズムをよく理解していない、と思います。また、一回のプランクトンネットで採集した試料の中に100種を超えるプランクトンが存在することも、普通に見られることですが、水中のような均一な環境で多種が共存することはハッチンソンのプランクトンパラドックスとして知られていますが、いまだにメカニズムは解明されていません。当たり前を当たり前と考えず、原理原則に立ち戻って再構築すべき時代に来ていると思います。

 そのためにツールもずいぶん整ってきた気がします。プランクトンは水中に生息し微小であることがほとんどなので、行動や生態を直接観察することができなかった生物で、そこが想像力を駆使する必要がある面白さでもあったわけですが、VPRのような光学機器で観察できたり、回転水槽(クライゾル)で疑似現場的な観察ができるようになりました。また、分子生物学的な手法は、同定、分類、進化、生理、生態など多方面にわたって無限の可能性を秘めています。今までできなかったことが、手に届くところまで来ています。遊んでいる暇はありません、会議や報告書で忙しいと愚痴を言っている暇もありません。さあ、楽しい研究をしましょう。

東京大学大気海洋研究所
津田 敦